教授挨拶
高度救命救急
概要

 当院高度救命救急センターは、湘南・県西・一部県央地域を担当する三次救急医療施設として、重症救急患者様の診療に当たっています。平成14年度からさらに厚生労働省により高度救命救急センターの認可を受け、基地病院として神奈川県ドクターヘリを運用し、神奈川県の救命救急医療に貢献しています。平成17年には、東海大学医学部付属病院のリニューアルに伴い高度救命救急センターも新病院に移転し、診療の一層の高度化と拡充を図りました。
高度救命救急センターに救急搬送される患者数は年々増加しており、平成20年は、7,040人(救急車6,743人、ドクターヘリ297人)の救急患者様の対応にあたりました。入院治療が必要となった患者様は2,684人を超えており、わが国有数の施設と診療規模を有する救命救急センターに発展しています。

高度救命救急センターでは、救命救急科に属する専門医が臨床研修医とともに診療チームを構成し、幅広い救急診療にあたっています。救命救急科は、教授1名、准教授4名、講師6名、助教8名、臨床助手9名の計28名の医師から構成されています。救命救急科は3つの診療チームを編成し、救急搬送患者の初療に対応するとともに、単科の診療科では対応が困難な重症患者の入院治療を担当しています
さらに高度救命救急センターでは、医師、看護師の他臨床実習を行う学生や救急救命士が診療チームに参加しています。
高度救命救急センターは、救命救急科に所属する専門医による診療体制とともに、各診療科の専門医による診療応需体制が整備されており、高度救命救急センターの対象となる、意識障害、ショック、心肺停止、多発外傷、重症熱傷、急性中毒、四肢切断、脳血管障害、虚血性心疾患や不整脈、呼吸不全、急性腹症や代謝性疾患などの重篤な病態を呈する重症患者への迅速な対応が可能になっています。
高度救命救急センターには、スキンバンク、急性中毒診療検査室が設置されており、重症熱傷や急性中毒への診療能力は非常に優れています。急性中毒診療検査室は、薬毒物の定量分析を実施し中毒治療に貢献するとともに、新しい分析法を開発し中毒病態の解明を進めています。
また、15名収容の大型の高気圧酸素治療装置を使い、急性一酸化炭素中毒、ガス壊疽や潜水病等に対して高気圧酸素治療を常時迅速に実施できる24時間診療システムが整備されており、県内だけでなく静岡県や埼玉県からも重症治療に利用いただいています。とくに、ダイビングのメッカである伊豆半島の東・南伊豆で発生した潜水病等の減圧障害に対応するため、ドクターヘリをも活用した緊急再圧治療システムを確立しています。
さらに、湘南地区(人口約200万人)のメディカルコントロール協議会の中核病院として、高度救命救急センター内にメディカルコントロール室を設置し、救急隊員が担っている病院前救急医療の質の向上に貢献しています。常時、1名の医師スタッフがメディカルコントロール担当医として従事し、救急救命士を含む救急隊員が行なう医療行為(気管挿管、静脈路確保、薬剤投与、除細動等)に対する指示、指導・助言を行なっています。また、救急救命士にさまざまな病院実習(卒前実習、就業前実習、再教育実習、気管挿管実習〔麻酔科〕、薬剤投与実習)を行うなど、教育にも力を入れています。
高度救命救急センターは、救急や災害現場での医療活動も重視しており、ドクターカー、ドクターヘリを駆使した現場医療を展開しています。とくに、平成12年10月から平成13年3月までの厚生労働省のドクターヘリ試行的事業を担い、わが国のドクターヘリ事業の発展のために先駆的な役割を果たしました。平成14年7月からは神奈川県ドクターヘリ事業を運用しており、神奈川県全域および山梨県南部の救命救急医療に貢献しています。
また、洋上救急医療に運用当初から参画し、太平洋上を航行または操業中の船舶で発生した傷病者を救命するために、海上保安庁・海上自衛隊と協力し診療チームを洋上に出動させ、海上での救命医療に大きな役割を果たしています。
さらに、高度救命救急センターは、災害拠点病院のひとつとして、神奈川県の集団災害医療システムを担うとともに、DMAT(災害医療支援チーム)を編成し、災害発生現場に医療チームを派遣する態勢を整備しています。


診療実績

<1>
疾病別の重症患者数(平成20年) 表1は、厚生労働省の様式に基づく、平成20年(1月〜12月)における疾病別の重症患者数を示します。病院外心停止289人、重症急性冠症候群275人、重症大動脈疾患67人、重症脳血管障害444人、重症外傷523人、重症熱傷31人、重症急性中毒106人、重症消化管出血192人、重症敗血症38人、重症体温異常13人、特殊感染症26人、重症呼吸不全54人、重症急性心不全144人、重症出血性ショック22人、重症意識障害72人、重篤な肝不全33人、重篤な急性腎不全23人、その他の重症病態149人でした。なお、上記疾病には熱射病、偶発性低体温症、窒息・溢頚、溺水、減圧障害等の重症患者が含まれます。

<2>
ドクターヘリにより搬送された疾患別の患者数(平成20年) 表2は、平成20年(1月〜12月)においてドクターヘリにより搬送された疾患別の患者数を示します。総搬送患者数301人のうち、外傷等外因によるものが179人、疾病によるものが117人でした。 外傷等外因によるもの179人のうち、外傷130人、中毒8人、熱傷6人、その他の外因10人で、心肺停止は25人でした。疾病によるもの117人のうち、脳神経系疾患57人、循環器系疾患31人、呼吸器系疾患3人、消化器系疾患5人、代謝性疾患2人、その他1人で、心肺停止は17人でした。

表1.年間重篤患者数(平成20年1月〜12月)

疾 病 名

人  数

退院・転院
(転棟を含む)

死  亡

病院外心停止

289人

289人

249人

重症急性冠症候群

275人

275人

12人

重症大動脈疾患

67人

67人

14人

重症脳血管障害

444人

444人

226人

重症外傷

523人

519人

91人

重症熱傷

31人

31人

10人

重症急性中毒

106人

106人

2人

重症消化管出血

192人

192人

16人

重症敗血症

38人

38人

18人

重症体温異常

13人

13人

2人

特殊感染症

26人

26人

4人

重症呼吸不全

54人

54人

13人

重症急性心不全

144人

144人

19人

重症出血性ショック

22人

22人

5人

重症意識障害

72人

72人

17人

重篤な肝不全

33人

33人

4人

重篤な急性腎不全

23人

23人

3人

その他の重症病態

149人

149人

10人

2,501人

2,497人

715人



表2.ドクターヘリで搬送された疾患別患者数(平成20年1月〜12月)
1.外傷等外因によるもの 一次:直送+転送

傷病分類

一次搬送

転院搬送

総計(人)

構成比%

外傷

130

130

43.2%

中毒

2.7%

熱傷

2.0%

その他外因

溺水

0.3%

熱中症

1.0%

減圧症

0.0%

電撃傷

0.0%

窒息

0.7%

アナフィラキシー

0.3%

縊頚

0.0%

その他の環境障害

1.0%

心肺停止

外傷

14

14

4.7%

熱傷

0.3%

中毒

0.0%

その他外因

10

10

3.3%

合計

179

179

59.5%