教授挨拶
コラム
〜ボストン留学記〜

はじめに

医師になり約10年間、基礎研究や論文執筆には全く縁のなかった私が、いつの間にか基礎研究に興味を持ち、紆余曲折を経て2013年よりボストンでの中年留学を開始した。気がつけば早2年が経過しようとしている。今回、その一端をボストンから報告する。

ボストン

私の所属しているMassachusetts General Hospital(MGH)、及びShriners Hospitalはボストンの中心部にあり、MGHはハーバード大学医学部の提携施設である。ちなみにハーバード大学医学部付属病院なるものは存在しない。ボストンは札幌とほぼ緯度が同じであり、ニューヨークより北東約300kmに位置する。レンガ造りの美しい街並みは”New England”と呼ばれるようにヨーロッパを思わせ、著名大学が数多くあるため、優秀な学生、研究者が集まる学問の街でもある。そのため、街を歩いていてもなんとなく品格を感じる。
昨年は記録的な大雪に見舞われ、約1週間も子供の学校が休みになった。一方、短い夏のボストンは緑豊かで公園も多く、快適そのものだ。また、4大プロスポーツすべてが揃っており、我が家は全員でボストンセルティックスの虜になってしまった。研究に没頭したい、スポーツ観戦が好き、寒くて長い冬が好き、治安を重視する、そんな人にはボストンはとてもいい街だと思う。

日常生活

氷点下20度では何枚服を着ても寒いこと。台所や風呂に換気扇がないこと。湯船が異常に浅いこと。洗濯機が地下にあること。約束した時間に業者が来ないこと。電車の時刻表がないこと。渡米後しばらくはそんな些細なことにいちいち動揺していたが、今では家族全員ボストンが大好きだ。そして細かいことが気にならなくなっている自分に気づく。子供やお年寄りには皆が必ず席を譲ること。仲の良い家族同士でバーベキューパーティーをすること。クラムチャウダーが意外と美味しいこと。最近ではボストンのそんなところが気に入っている。毎朝、子供を小学校まで送り、さらに30分ほど本を読みながらシャトルバスで研究室に行く生活も快適に思えるようになった。私が理解できなかった小児科医の質問に7歳の長男がすらすらと英語で答える姿に感動したこともあった(そして悔しかった)。そんな家族の小さな成長をしっかりと実感できるのも留学のいい点だと思う。

研究

我々の研究室は主に熱傷後の代謝異常を研究しており、Principal Investigator であるDr. Yu は熱傷後のアミノ酸代謝異常研究における第一人者である。私の研究テーマは熱傷マウスモデルにおける骨格筋の糖代謝異常のメカニズムであり、ポスドク4名とともに非常にゆったりとした雰囲気で実験をしている。ただし、Dr. Yuから笑顔で突然宣告される「3日後のミーティングでプレゼンテーションよろしく。30分くらいで簡潔にまとめてね…」には何度か泣かされた。2015年4月にシカゴで行われた米国熱傷学会ではこれまでの研究結果を発表する機会があり、得るものが多かった。また、研究室で定期的に行われる各国研究者の質の高い発表や活発なディスカッションは大変勉強になり、常にやる気を出させてくれる環境にある。MGHのERを見学したり、外傷症例検討会にも参加することができるため、今後の臨床にも直接生かせる経験も可能である。

さいごに

家族揃っての海外生活は初めてであるため、2年経過しても未だに言葉の問題などで苦労することもあるが、非常に充実した生活を送ることができている。このような素晴らしい環境で勉強する機会を与えてくださった猪口教授をはじめ、医局の皆様には心から感謝する。

ボストンより 山際武志